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2021年 09月 02日 会社設立起業・開業

法人成りした場合の個人事業税見込み控除について

個人事業を廃止した時、最後の個人事業税をその年の必要経費に算入する方法の1つに「個人事業税の見込み控除」があります。
法人成りして個人事業を廃止した年にも使えるので、ぜひ知っておきましょう。

法人成りした場合の個人事業税見込み控除について

個人事業税は必要経費になる

個人事業税は、事業所得は不動産所得の必要経費になる税金ですが、計上するタイミングに特徴があります。

個人事業税とは

個人事業税とは、個人事業主の年間の所得をもとに、都道府県から課税される税金です。都道府県税事務所は毎年、個人事業主の確定申告(※)の情報をもとに税額を計算し、毎年8月に納税通知書を送付します。
納期限は、年2回に分けられており、第1期が8月末、第2期が11月末です。
税額は、事業所得や不動産所得の額を個人事業税の独自ルールで調整し、3%~5%(業種による)をかけて計算します。
(※)都道府県税事務所に直接申告することも可能です。

個人事業税は支払った年の必要経費に

個人事業税は、毎年、支払った年の必要経費に算入していると思います。
これは、賦課課税方式かつ納期が分割して定められている税金について、「それぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができる」というルールがあるからです。(所得税基本通達37-6
つまり個人事業税は、いつもなら所得が発生した「翌年」の経費になります。

法人成りした年の個人事業税

さて、年の途中に個人事業を廃止して法人成りした場合、翌年はもう個人事業の所得はありません。
その場合、個人事業税はどうやって必要経費にすればよいのでしょうか。

個人事業税の見込控除とは

事業を廃止した年の個人事業税は、先ほどのルールによらず、事業を廃止した年の必要経費とすることができます。
では、金額はどうすればよいかというと、「見込み」の税額を計算してよいこととされています。
これを「個人事業税の見込控除」といいます。

個人事業税の見込控除額の計算方法

【個人事業税の見込控除の計算式】
(A±B)×R÷(1+R)
 A: 事業税の課税見込額を控除する前の当該年分の当該事業に係る所得の金額
 B: 事業税の課税標準の計算上Aの金額に加算し又は減算する金額
 R: 事業税の税率

個人事業税の見込控除では、個人事業税を1年間前倒して経費にしますので、計算式では1年間前倒しした現在の価額を計算していると捉えていただければよいのではないかと思います。
問題は、計算式の意味よりも「B」にあります。
まずAは、事業所得や不動産所得などの金額です。
Cは、3%~5%の税率で、業種によって変わります。

業種と税率は、県のホームページで確認できます。
 滋賀県HP:「個人事業税」


さて「B」ですが、これは個人事業税の独自のルールによるものです。
税額を計算するために、所定の金額をAに加減して調整します。
何を加減するかは、地方税法第72条の49の12に細かく定められています。
基本的には、青色申告特別控除を加算して、事業主控除(年間290万円の月割り額※)は減算するというものになりますが、もし次のケースにあてはまるものがあれば、税理士に計算を依頼することをおすすめします。

  • 社会保険診療報酬がある場合
  • 外国所得税額がある場合
  • 青色事業専従者給与や白色申告の専従者控除がある場合
  • 青色申告の損失の繰越控除がある場合
  • 白色申告の被災事業用資産の損失がある場合
  • 事業用資産の譲渡損失とその繰越控除がある場合

※事業主控除は、その年中の事業を行った月数で月割り計算します。

事業主控除の月割り額はこちらをご覧ください。
 滋賀県HP:「個人事業税」

個人事業税の見込控除額を計上しなかった場合

見込控除ができることを知らずに、そのまま法人成りしてしまった方もいらっしゃると思います。
この場合は、所得税を多く払い過ぎていることになりますので、原則どおり「更正の請求」で対応します。
ただしこの場合は、廃業した場合の必要経費の特例(所得税法第63条)を適用することとなりますので、更正の請求の事実が生じた日の翌日から2か月以内が提出の期限になることに注意しましょう。(所得税法第152条、所得税基本通達37-7)
なお更正の請求のときは、都道府県税事務所からの納税通知書に記載された税額を必要経費に算入すればよいので、前項の計算は必要ありません。